「ここに居る人は、みんな冬生まれか。」
見ず知らずの人々が行儀よく列をなしている。
とても遠い存在なのに、不思議と少し親近感を抱いてしまう。
免許センターに来る度にそんな感覚になっている気がする。
久しぶりの更新手続き。もう5年も経ったのか。今月また一つ歳を取る。
免許証をまじまじと見る。5歳若い自分の顔。
表に印字されてる住所も名前も、今とは違うものだ。
この5年間で色々あったんだな、なんて思う。
誰にも言ってないが、結婚後の姓が好きになれなかった。
すごく違和感があった。何だろうね。
結婚前の違和感て、どうしてこんなに当たってしまうんだろう。(他にも沢山あった)
それを無視して、思考で納得させようとしていた。とても愚かだった。
交際していた時から、全然上手くいってなかったのにね。
体って本当に分かってるんだな、と感心してしまう。
そういえば、自分の本名は自分じゃ決められない。
基本的に偶然与えられるものだ。(自分で改名する方も居るけど。)
小中学生の時「自分の名前の由来を聞いてくる」という宿題があった。
大切につけられた名前もあれば、親の知り合いが適当につけた例もあった。
中には親が石原裕次郎のファンだったから裕子になった、なんて人も。
私の場合は、祖父の名前から一文字とってつけられたそうだ。
たとえ名づけの由来に大きな意味がなくても、
偶然にも自分に与えられたのだから、名前の文字には特別なものを感じてしまう。
漢字の成り立ちを調べてみたことがあるが、面白かった記憶がある。
30分の講習を終え、新しい免許証を確認した。
免許証がきれいに元の名前に戻り、気持ちも少し更新された気分だ。
ただ、身だしなみを整えたつもりなのに、変な所からぴょんと髪が飛び出してる。
5年間この写真か…。5年前もそう思った気がする。まあ、いいか。
ここから5年間、どんなことがあるだろう。
次の更新の時は何を思うんだろう。楽しみなような、怖いような。
確実に時間は進んでいる。
何となく思い出した懐かしい歌。
”どこでも行けるさ 振り出しが始まり
それでもなけなしのコート羽織って進むのさ”