久しぶりに散髪に行った。
「美容室でカット」って、私には不似合いな気がして何だか上手く言えない。レストランの「ライスとパンどちらにしますか?」も「ご飯で」って言いたくなる。ちょっと無理して「ライスでお願いします」と答えるけれど。
3ヶ月ぶりくらいの美容室。長年通っている場所だ。一人でやっているお店で、扉を開けるといつも元気な声で出迎えてくれる。声も体も大きいが(自称)人見知りらしい。気さくで柔らかい人柄の美容師さんだ。
この頃はずっと髪を伸ばしている。今までは長くなると切りたくて仕方なかったのに。何となく伸ばしている旨を伝え、細かいところはお任せした。
散髪の間、他愛のない話をする。今日は海の話が印象的だった。彼は海が大好きで、時間があれば海へ行き、釣りかサーフィンをするのだ。
波に"乗らせていただく"と彼は言った。自分の力で何とかしようとしても難しい。準備をして乗りたい波を待つんだって。
今の私は波に逆らって泳いでるのかもしれない、と思った。泳いでも泳いでも思うように全然進まず、疲れて焦って不貞腐れて。思い通りにしたい傲慢さが恥ずかしい。諦めてただただ今に浮かぶしかない。そんな時なのかもしれない。
少し軽くなった髪を、束ねずにおろしたまま帰った。