夕方に咲く恋の話

家のすぐ外から話し声がする。

盛り上がる話声は遠ざかる気配がない。

 

多分、男子1人と女子が2人。

古きよき昭和の装飾ガラス越しにはハッキリ確認できないけど

どうも中学生が近くの空き地で”恋バナ”をしているらしい。

 

「あー、うるさいな。」

正直そう思ってしまったが話が尽きることはない。

寧ろ盛り上がってる。(やれやれ)

 

でもいいな。青春だな。

誰が好き?とか好きバレが~とか話してる。ちょっとかわいい。

思春期に恋愛に興味津々って成長してる証の一つだよな。

そんなことを考えてたらちょっと羨ましくて

微笑ましいけど切ない気持ちにもなった。

 

下校しながら恋バナで盛り上がるなんてこと、私はなかったな。

すっかり大人になってようやく失ったものの眩しさを痛感する。

 

いや馬鹿だよね、本当に。

過ぎてしまったことは仕方ないし、喪失感は誰にでもきっと少なからずある。

みんなそれを心のポケットにそっと忍ばせながら生きているのかもしれない。

 

若いうちにどんどん恋して傷ついて自分を知って成長して

最終的には幸せになってほしいな…なんて老婆心ながら思ったけど

自分の後悔を若者に重ねて押し付けてるだけなのかもしれない、と気づく。

 

45分くらい過ぎて話し声が遠ざかり始めた。

 

「気をつけて帰れよ」そして「できればもう他の場所で恋バナしろよ」と

心の中で密かに中学生を見送ったのだった。