1人暮らしである。
この古い平屋には、私以外に一つだけ、命あるものが存在している。
それは、観葉植物のパキラだ。
いつしか心の中で「パキちゃん」と呼ぶようになった。
近ごろは「パキ」、「パキ子」、「パキ山パキ蔵」と呼んでみたりする。
なぜそう呼ぶのか。特に意味はない。あるはずがない。
ちなみに、職場にも観葉植物がある。
漫画「今日から俺は‼」の伊藤くんの髪型みたいに、
天に真っ直ぐ伸びる系の植物だ。(あの漫画ちゃんと読んだことないけど)
サンスベリアという名前らしい。
今度から「サンちゃん」な。「サニー」もいいかも。
パキラは、ここ引っ越してきた頃、義理の姉がくれたものだ。
引っ越し祝いなのか何なのか、よく分からなかったが
姪っ子と甥っ子の手紙と共に、うちにやって来た。
嬉しかったものの、私は植物の扱い方を知らない。
おまけに面倒くさがりだ。ちゃんと手入れできるか疑問だった。
そんな思いをよそに、パキラはぐんぐん育った。
比較的、初心者でも育てやすい植物らしい。
この一年半、時どき水をやる程度だが、今のところ枯れていない。
新芽が次々出る。一度だけ剪定したが、あっという間にふさふさになった。
丈夫なのでつい、放置してしまう。
何日も水をやっていない事に気づき、今朝、慌てて土を潤した。
久しぶりにまじまじ見つめると、葉にうっすら埃がついている。
茂ってはいるが、力がなくうなだれ、少し悲し気な雰囲気。
それでもパキラは、ただただ健気に生きていた。
申し訳ない気持ちになり、パキラを縁側に移動させた。
今この家で一番日当たりがいい場所だと思う。これで少しはあったかいかな?
植え替えもしてあげないと、足元がすっかり窮屈そう。
何かを育む余裕を持てたらいいのだが。
パキ山さん、すみませんが、日向ぼっこしながらもう暫くお待ちください。